スロウハイツの神様 上下

2009.10.18 *Sun
辻村 深月(著)

作品紹介
売れっ子脚本家・赤羽環がクリエイターばかりを集めた「スロウハイツ」。そこには漫画家や映画監督、画家を目指す面々と、人気作家チヨダ・コーキが住んでいた。彼らはそれぞれに悩みを抱き、衝突し、互いを磨き合っている。
中でもスロウハイツの「手塚治虫」(この場合は中心人物という意味合いの)チヨダ・コーキは、数年前猟奇的なファンが大量殺人を起こしたことで、社会的に問題になったことがあった。一度は筆を折った彼が復活を遂げたのは、『コーキの天使』と名付けられた少女からの手紙だ。

「私は生きています」
そのタイトルから始まった手紙が、彼を救った。

十年後、スロウハイツで、クリエイターの卵たちと平穏に、幸せに暮らす彼に、再び不穏な影が忍び寄る。彼を思って不安や不満が募る同居人たちの前に、謎の少女・加々美莉々亜が現れ、穏やかだったスロウハイツが徐々に軋みだした……


感想
辻村 深月さんの作品はこれで三作目ですが、やっと「ああ、好きな作家さんだなぁ」と思えました。
『スロウハイツの神様』は、前向きでやさしくて、愛情にあふれています。ラストに向けての盛り上がりは、繊細でいて力強く、惹きつけられました。(『凍りのくじら』と同じタイプの物語ですね)


『コーキの天使』ちゃんからの手紙は印象的です。
派手な事件を起こして、死んでしまわなけば、声を届けてはもらえませんか。生きているだけでは、ニュースになりませんか。
同じく物書きをしている私は、これを読んでて涙が出ました。作者さんが悪いのではない。作品が悪いのではない。捉える側の人間の問題なのだ。世間がチヨダ・コーキをバッシングしている間、切実に彼を想って手紙を書いていた少女のエピソードは、たまらなかったです。

人物描写が丁寧な作品で、終わりに近づけば近づくほど、この手紙が彼を救ったのだと胸が詰まりました。

今回もやっぱり、出来過ぎな登場人物が多かったり、中盤中だるみは感じてしまいましたが。
先にあげたエピソードも含め、どんどん物語が一つの終結に向けて進んで行くのが、とてもよかったです。ああ、あれはこういうことだったのか。なんて、慌てて上巻を読み返したりもしました。細かなエピソード一つ一つが繋がっていくのは、ぞくりとします。

読了感も気持ちが良くて、是非他の人にも読んでもらいたい作品です。


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(2007/01/12)
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